佐渡島 一人旅

 社会人になって初めての有給を使い佐渡島に来た。新潟港を発って1時間半ほどすると水平線上に黒い影が見えた。フェリーが前進し視界がはっきりするとこの島が如何に大きいものか分かった。船着場を出るとすぐにレンタカーを借りて北へ向かってドライブを始めた。所々にある小さな村や港町では古い木造の家屋がよく保存されていた。田んぼと瓦張の木造家屋からなる風景の中にいると古き良き日本にタムスリップしたように感じられた。このような日本らしい風景に感動を覚える瞬間は本州では感じることができないものだった。



 島の北側では二つ亀と大野亀に立ち寄った。どちらも海に突き出した巨岩で、大野亀の方にはこの時期が見頃のトビシマカンゾウが咲き乱れていた。



 激しい雨の降るなか島の西海岸を南下し尖閣湾に寄った。ただの海岸だと思って期待していなかったが切り立った岩の作り出す風景は圧巻だった。



 さらに海沿いを南下すると相川村に着いた。ここは戦国時代から昭和にかけて金銀の採掘で栄えた街だった。金山には採掘によって掘られた無数の坑路が残っており見学することができた。穴の中は冷蔵庫の中のように肌寒かった。トンネルの数百メートルの長さがあり、かつて働いた人々の苦労を感じられた。薄暗いトンネルの中を歩いているとインディアナジョーンズような冒険家になったみたいでワクワクした。



 二日目は昨日と打って変わってよく晴れていた。ホテルをチェックアウトすると車を宿根木に走らせた。この小さな漁村は古い街並みがそのまま保存されていた。路地を歩いていると二匹の猫が人を警戒する様子もなく日向ぼっこしていた。この地域の漁港では半ギリという丸太を半分に割ったボートが使用されており、観光用のものに乗ることができた。不安定なのかと思っていたが転覆することはないと漕ぎ手のおじさんに教えてもらった。




 再び車を走らせオーシャンビューのカフェで昼ごはんを済まし、トキの森公園に向かった。行く途中、一面に広がる田んぼの風景がとても美しかった。トキの森公園ではケージで飼育されたトキを見学することができた。昔乱獲されて警戒心が強くなったからだろうか、トキの性格が神経質だということが印象に残った。



 島を一周し両津港に戻ってきた。あっという間だったが、もう帰らなければならない。新潟に向かうフェリーで佐渡島で見た風景が思い出された。少し寂しい気持ちになった。そしてこの島の美しい自然と街並みがこの先も保たれて欲しいと願った。